“The Elastic Edges” by KAITO Itsuki from 20230325 to 20230416
Ritsuki Fujisaki Galleryでは、2023年3月25日(土)より4月16日(日)まで、皆藤齋による個展”The Elastic Edges”を開催いたします。
直近では、MAMOTH (London, UK)でのレジデンスプログラムへの採択、同スペースでの個展の開催や、14a (Hamburg, Germany)、Blue Velvet Projects(Switzerland, Zurich)、HIVE CENTER FOR CONTEMPORARY ART (Beijing, China)での展示を通して世界中で注目を集めており、日本では約1年半ぶりの個展の発表となります。
作家ウェブサイト、CV
クマ財団によるインタビュー
https://kuma-foundation.org/news/6030/
https://kuma-foundation.org/news/6816/
La réception et l’assimilation de ce qui fit
皆藤齋の作品を際立たせるものは、一見するとシュールレアリスティックで無関係な図象群が、現代における彼女にとっての体験やリアリティを基礎として、かつ極めて体系立てられて展開されているナラティヴアートであることだろう。
本展のタイトル、’The Elastic Edges’は、自他との境界をマッピングすること、その関係性の存在可能性について表している。
彼女はこれまでも独自の神話体系の中で、明確な意味を伴って表象を用いてきたが、本展にて展示される、「拘束具をつけた四肢」、「ナイフゲーム」、「ペンギンバッグ」、「悲しい顔をしたポット」、 それぞれの表象は自他との境界、特にフィジカルとサイコロジカル、体験と記憶、快と不快や男と女など様々な二項対立とその境界線を暗示している。
著名な文化人類学者であるレヴィ=ストロースはその主著『神話論理』の中で、二項対立を含む様々な構造が神話の体系に見てとれ、それが物語を駆動させていることを指摘している。 一方で、南米のボロロ族の祭祀が構造解析を行なわれたところで、それがその祭祀自体と等価ではないことは留意しなければならない。 即ち、彼女の絵画を美学的な見地によって解釈を行うことは本展の主眼から外れる。言語を通した解釈とは異なる形で彼女の実践に内在する豊かさに触れる試みをするべきだろう。
レヴィ=ストロースは上述の『神話論理』が書かれる直前、1960年の講義で、
「われわれは人類学者を、むしろ、一連の合理的操作によってひとつの機械を考え、そして組み立てる技師をモデルとして想像いたします。ただ、機械は動かさなければなりません。論理的確実性だけでは不十分です。他者の内奥の経験を自分自身について試みる可能性は、自然科学と人文科学が同様に必要性を感じているあの経験に基づく最終的な満足を獲得するために与えられている手段の一つにすぎません。おそらくは、ひとつの証拠というよりはひとつの保証というべきでしょう」
と語っている。
皆藤にとって”他者”であるかもしれない”私たち”が、無関係な視覚的コラージュ、そのナラティヴのブリコラージュに接近、あわよくば同化することが、神話を通して境界性の再考を促す。 そして、それは視覚芸術の本懐の一つと言えるのではないだろうか。